車の凹み修理はどのような工程で行われる?

  1. 車修理

車のボディの凹みは、放置すると塗装面が剥げ錆びを発生させる原因となります。
早めの修理が必要ですが、このような凹みを修理に出すと思いのほか高額な修理費用がかかるため、ためらう方もいます。
車の凹み修理の費用が高額になるのは、熟練の技術や手間暇がかかるためなのです。
一般の人にはなかなか知られていない、車の凹みの修理工程をみてみましょう。

基本は凹み部分を叩く&引っ張る板金作業を施す

車の外観の多くは金属の板でできています。
この部分に凹みができた場合には、金属の板の裏に当金をして、表からハンマーで凹みを平らに戻していきます。
ハンマーで叩くと言うと「金属の板の裏から叩くのでは?」と思うかもしれませんが、ボディの凹みはただ凹んでいるのではなく、クレーターのような出っ張りがあります。
この出っ張りを叩くことで凹みの部分を盛り上がらせ、平らに戻せるのです。

表から叩く作業では、当金をどこに当てるか、どのくらいの力加減で叩くのかといった技術力が必要となってきます。
金属の板は車体の部分によって厚みも硬さも異なります。
これらの違いを考えつつ、複数のハンマーを使い分けながら、作業を行わなければなりません。
また、平らなわけでもなく微妙な曲線を描いています。
このような様々な条件を加味しながらの作業となるため、熟練の技が必要です。

叩く作業は、場合によってはパーツを取り外して行うこともあります。
このような時には、周りに傷をつけない様に細心の注意を払って取り外し、修理を施した後には慎重に取り付けるという作業が必要となります。
当金を当てることができない部分や、非常に細かな部分などは、叩く作業ができません。
このよう場合は専用の工具を使い、引っ張ることで元に戻していきます。
工具の先端を金属の板に溶接し、絶妙な力加減で引っ張り元に戻すのです。

やはりこの作業にも熟練の技術が必要です。
このような作業を板金作業といいます。

樹脂パーツはヒートガンを使い元に戻す

車の外観には金属の板だけではなく、樹脂で作られたパーツもあります。
バンパーやアンダースポイラーなどの部分が、樹脂パーツの部分です。
もともと衝突しやすい部分なだけに、凹むことが多い部分となります。

このような樹脂パーツは、金属の板の凹みを修理する作業とは異なる方法で凹みを治します。
ヒートガンという熱風を発生させる道具を使い、樹脂を熱してやわらかくし、凹みを修正していきます。
ヒートガンも高温すぎる熱風で樹脂パーツを熱してしまうと溶けてしまいますので、どの程度の熱を加えて修正を行うかを見極める必要があります。
最近では熱を加えることで元に戻る樹脂パーツもありますが、このような性能がない樹脂パーツは、慎重に凹みを修繕しなければなりません。

パテ盛りで滑らかな表面に仕上げる

板金作業は、ヒートガンを使った作業で凹みを限りなく元に近い状態に戻しても、やはり細かな凹みが残っていたり、傷が付いていたりします。
このような細かな凹みや傷を「パテ」というもので埋めていきます。
この作業を「パテ盛り」といいます。
パテにも細目、中目、粗目といった様々な種類があり、重ね塗りをすることで表面を滑らかにしていきます。

ただ、重ね塗りをするといっても、パテはできるだけ薄く塗る必要があります。
板金作業はヒートガンでの作業の仕上がり状態が重要ですし、どのパテをどの程度塗るのかを適切に判断する必要もあります。

パテ盛り作業は手早く行わなければならず、一人前になるまでには10年はかかるといわれています。
パテを厚く塗ってしまうと、色むらができたり塗装がはがれやすくなったりするといった不具合が起こります。
パテ盛りを行った後は、やすりをかけて表面を滑らかに仕上げます。
複数の研磨機を使い、丁寧に作業を行います。

サビ止めを施しつつ細かな傷を埋める

金属は水や空気に触れることでサビを発生させます。
パテ盛りをした後にサビ止めを施すことで、サビを予防できます。
また、パテ盛りをしても細かな傷は残っているため、この傷を埋める役割もサビ止めが担います。

ボディに合った色を調色し塗装を施す

車の色は見た目に同じ色合いであっても、細かな部分で違いがあります。
また新車購入時はメーカーが施した通りの色であったとしても、経年劣化や日差しを浴びることなどで変色が起こります。
車ごとに微妙に色は異なっているのです。
車のメーカーが指定している色ではなく修理を施した車の色に合うよう、塗料を調色するという作業が必要になります。
わずかな違いでも車に塗ってみると違和感が出ますので、調色は非常に重要となります。

また調色された色を塗装する時も、どのような厚みで塗れば周囲の色と馴染みやすくなるのかを考えつつ行わなければなりません。
塗装自体にも熟練の技が必要になります。

磨き上げ周りと馴染ませる

調色された塗料を凹み修理部分に塗り、さらにトップコートも塗装します。
これらが乾いた後に磨き上げる作業を行います。
この磨きを行うことで、今回修理を施し新しく塗装を施した部分と、修理を行っていない部分との境目をぼやかし、馴染ませるのです。
また、磨き上げることで車のボディに見られる独特の艶を出していきます。

まとめ

凹み修理にはこれだけの技術が必要なので、料金は思っているより高めと感じるかもしれません。
しかし、凹みを放置するとサビができる可能性もあり、車の価値を損ないます。
凹みを見つけた時には、できるだけ早く信頼できる板金工や塗装工がいる板金塗装工場に行って修理を依頼しましょう。

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